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「お前は階段でこけて落ちたんだ」


あたしは咲紀にそう言い、解放した。


咲紀の右腕は力を無くし、軟体動物のようにぶら下がっている。


咲紀は小さな呼吸を繰り返し、体を震わせているだけで何も言わない。


「ほら、立てよ」


そう言って無理やり立たせると、青ざめてうつむいてしまった。


「どうするの?」


明日香がそう聞いて来たので「今言った通りにする」と、答えた。


これから咲紀を階段から突き落とすのだ。


「でも、ここ一階じゃん」


「一度二階に上がらないとね」


面倒だけど、仕方がない。


「美春。廊下に人がいないか確認して」


あたしがそう言うと、美春はすぐにドアをあけて廊下を確認した。


「誰もいない」


その言葉を合図に、あたしと明日香は咲紀を引きずるようにして歩き出した。