咲紀は元々帰宅部で、小説を書いた経験もなかったらしい。


ただ読書が好きでよく図書室を利用していた。


その時、図書室の先生から文芸部に入部してみたらいいのにと声をかけられて、ここへやってきた。


ただの読書好きと、小説の書き方を学んでいるあたしたちとでは格が違う。


あたし達の方が上のはずだった。


それなのに、数か月前に開催された高校生向けの短編小説コンテストで、咲紀は入賞したのだ。


1年生の頃から頑張って書いて来たあたしたちは、1次審査を通りもしなかったのに。


結果がわかった時の咲紀の顔は今でも忘れられない。


頬を赤くして照れ笑いを浮かべ「こんなの偶然だよ」と、言ったのだ。


謙遜してそう言ったのは理解している。


だけど許せなかった。