《美春は電車に撥ねられて死んでしまう》


その文章に目が釘付けになっていた。


「愛奈どうしたの? 手が止まるなんて珍しいね?」


美春にそう声をかけられて、あたしは息を飲んで顔を上げた。


咄嗟に日記を机の中へと隠した。


「別に、なんでもないよ」


そう言うが、笑顔がひきつっているのが自分でもわかった。


今の文章は一体なんなんだろう?


心臓がバクバクと嫌な音を立て始めて、じっとりと手に汗をかきはじめる。


日記は咲紀が自殺をするところで終わるはずだった。


それなのに、まだまだ続きが書かれているのだ。


「でも、顔色も悪いよ?」


そう言って美春があたしの額に手を伸ばして来たので、あたしは咄嗟に美春の手を払いのけていた。


美春が驚いた表情でこちらを見つめる。


「ご、ごめん……。でも、大丈夫だから」


あたしはそう言い、もう1度ペンを握りしめた。


《美春は電車に撥ねられて死んでしまう》


その文章が、いつまでも頭から離れなかったのだった。