「目が覚めたんだね。よかった」


和人はそう言ってほほ笑む。


「交通事故に遭ったんだけど、覚えてる?」


そう聞かれて、あたしは事故前の記憶を取り戻した。


そうだ。


あたしはボーっとしながら横断歩道を渡っていて、事故に遭ったんだ。


和人は落ち着いた様子で、ベッドの隣の椅子に腰を下ろした。


あたしの視界の隅に、和人の姿が残る形になった。


ねぇ、さっきから首を動かすこともできないの。


そう伝えたいけれど、やはり声が出て来ない。


「すごく大きな事故だったんだよ。愛菜は1度車に撥ねられて、落ちてきた時に反対車線から来た車にもう1度撥ねられたんだ。それで生きていたなんて、奇跡だよ」