渡り切った場所に咲紀が立っていて、振り向くとそっちには健太郎が立っているのが見えたのだ。


2人とも青白い顔で、こっちこっちと手招きをしている。


「あぁ……」


こんなの幻覚だ。


実際には咲紀も健太郎もここにはいない。


早く、早く決めないと。


それらはほんの数秒間の出来事だった。


クラクションを鳴らした車が急ブレーキをかける音が聞こえてくる。


あたしは驚いて視線を向ける。


一瞬運転手の男性と目が会った気がしたけれど……次の瞬間、あたしの体は大きく跳ねあげられていたのだった。