「今はまだ葬儀の準備とかで忙しくて、詳しくはわからないままなんだ」


男性の言葉にあたしと明日香は顔を見合わせた。


詳しくわからないと言う事は、ちゃんとした遺書は存在していないのかもしれない。


「あの……自殺、だったんですか?」


「……そうだね。たぶん、そうなんだと思う」


何度も頷いてそう答える男性。


自分の中でもまだ整理がついていない状態なのだろう。


あたしたちと話をしながらも、男性は上の空だった。


「どうして自殺なんか……」


美春が呟くように言う。


「そうなんだ。原因が全然わからない。咲紀は昨日怪我をして救急車で運ばれたけど、それ以外に変わったことなんてなにもなかったんだ」


やっぱり。


咲紀は遺書も用意せずに死んだようだ。


そうわかると、一気に気分が楽になっていく。