どこへ行くこともできないまま、夜が来ていた。


時折聞こえて来るサイレンの音に気が付く度、あたしは草木の陰に隠れてやり過ごした。


スマホを確認するとクラスメートや両親からの着信が複数入っていることに気が付いた。


だけど、こちらから連絡することなんてできなかった。


もしかしたら、警察はもうあたしの家にいるかもしれないのだから。


そう考えると全身が重たくなって、もう一歩も動けないような気がした。


「どこか、眠れる場所を探さないと……」


そう呟き、河川敷の周辺を見回した。


夜になると気温は下がり、さすがに制服姿のまま眠ることは困難そうだ。


せめて室内がいいけれど……。


そう考えた時、部室を思い出していた。


確か、窓の鍵の1つが壊れていて、来週業者に取り換えにきてもらう予定にしていたはずだ。


ということは、今日はまだ鍵が開いていると言うことだ。