「文芸部やめちまえよ!」


怒鳴ると同時に、思いっきり机を蹴り上げた。


ガンッと大きな音がして、椅子に座っていた久林咲紀(ヒサバヤシ サキ)が、ビクリと体をこわばらせた。


文芸部の部室にいるのはあたしたち4人だけ。


先生の姿も他の生徒の姿もない。


やるなら、今だった。


「なにこの作品。ダッサ」


咲紀のメモ帳を見てそう言ったのは、同じ文芸部の堀口明日香(ホリグチ アスカ)だった。


明日香は丸い目元を細くして笑っている。


「返して!」


咲紀が明日香へ向けて手を伸ばす。


その隙をついてあたしは咲紀の座っている椅子を蹴とばした。


半分腰を浮かせている状態だった咲紀は、椅子もろとも横倒しに倒れる。


咲紀のポニーテールがほどけて、長い髪が床に広がった。


「まるでお化けじゃん」


あたしは咲紀を見下ろしてあざ笑う。