「なんだよお前、見てたのかよ」


昌一はそう言ってしかめっ面をする。


「偶然見たんだよ！　まさか付き合ってるんじゃないだろうな！？」


その質問に、あたしの胸はドクンッと跳ねた。


聞きたくない。


その思いから俯く。


しかし、その場から逃げることはできなかった。


……気になる。


いっそのこと昌一の口から本当のことを聞いてスッキリしてしまいたい気持ちもあった。


「そんなんじゃないって」


昌一がめんどくさそうな声でそう言ったので、あたしは顔をあげた。


「あいつが話があるっていうから、聞いてただけだよ」


そう説明する昌一は本当に迷惑そうな顔をしている。


「それ、本当に？」


思わずそう聞いていた。


「なんだよ、もしかして麗衣も見たのか？」


昌一に聞かれてあたしは気まずさを隠しながら「買い物帰りに似てる人がいるなって思っただけ」と、返事をした。