浩哉とカノンが登校してくると、相変わらずの想イジメが始まった。


けれど今までとはどこか違うのは、想が反撃し始めているというところだった。


「昨日は大げさにのたうちまわりやがって! 驚かすんじゃねぇよ!」


浩哉がそう言って想の机を蹴ると、想はすぐに床に倒れ込んで悲鳴を上げる。


その悲鳴があまりに大きな声だから、隣のB組の生徒が心配してかけつけるくらいなのだ。


ちょっといじるだけでそんな風に大げさに叫ぶものだから、浩哉とカノンはうかつに手出しをできなくなっていた。


想は勝ち誇った笑顔を2人へ向けて、悠々と読書を始めている。


クラスからイジメがなくなることは嬉しかったけれど、想のやり方は周りを巻き込んでしまっている。


「あれもアプリからの助言なんだろうね」


休憩時間中、美世がそう言って来た。


想の悲鳴のことを言っているのだとすぐに理解できた。


「たぶんね。今までの想はあんなことしなかったもん」


「だよね。でもあれはやりすぎだと思わない? B組の子もビックリしてたじゃん」


確かにその通りだと思う。


けれど、それ以外にアプリからの助言がないのなら仕方がない気もする。


元々想は反撃できるようなタイプでもないし、それがここまで成長しているのだからやっぱりすごいことだと感じられた。