そんなことを考えていると、カノンと浩哉の2人が登校してきた。


2人が教室に入ってくるとなんだかあたしまで緊張してしまう。


みんなと会話しながらも、あたしの視線は教室の後方へと向けられた。


想はいつも通り自分の席に座って本を広げている。


そこへ大股で近づいていく浩哉はすでになにかを企んでいるようで、顔に歪んだ笑顔が張り付いている。


「よぉ~想!」


浩哉は大きな声でそう言い、浩哉の肩に肘を乗せる。


「今度はお前から金銭をせびろって言われたんだけど、どうするお前?」


教室へ入って来る前にアプリに質問してきたのかもしれない。


あるいは、アプリなんて使っていないのにアプリのせいにして想にたかっているのかも。


「お金なんてないよ」


想の消え入りそうな声はいつも通りで、あたしは思わず落胆してしまう。


さっきアプリに質問していたのに、簡単には上手くいかないのだろう。