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救急車とパトカーのサイレンがが聞こえて来ても、あたしはずっと動画撮影を続けていた。


幸い自分に怪我はなかったし、この動画がなにかの証拠になってくれる時だってあると思う。


ほんの少しの罪悪感を、そんな風に言い訳をすることでやり過ごしていた。


「すごいところを目撃しちゃったね」


あたしがファミレスから出たのは、運転していた女性が救急隊員に運ばれた後だった。


「もう少しで死んでたかもしれないのに」


佑里香が呆れた声であたしへ向けてそう言った。


まだ、あたしが動画撮影をしていたことを怒っているみたいだ。


「死ななかったんだからいいじゃん」


それに、嫌なら先に帰っていてもよかったのに。


内心そう思いながらスマホをつつく。


少し長い動画だけれど、自分のSNSに投稿することはできそうだ。


これであたしも有名人になっちゃったりして。


鼻歌気分で、あたしは動画を投稿したのだった。