「外へ出たことがないから、両親の言葉が本当かどうかなんて疑いもしなかった。あたしは毎日家の中にいて、両親の言う事に従うだけだった」


当時の事を思い出したのか、美世はぬいぐるみをグッと強く握りしめた。


その拍子に腹部から一握りの綿が飛び出した。


「料理に掃除にお風呂掃除。あたしは5歳までにほとんど1人でできるようになってた。その代わり、他の子みたいに遊ぶことは知らなかった」


美世の言っていることは本当だろうか?


信じたいけれど、信じられない。


頭も心も、全然ついていかなかった。


「でも、1度だけお父さんがプレゼントをくれたの。それが……」


《ボクが解決してあげる!》


美世がふふっと嬉しそうな笑い声を上げた。


「ぬいぐるみなんて見たことがなかったからすごくビックリしたよ。しかもしゃべるんだもん」


父親からもらった初めてのプレゼント……。


「でも、そんな洗脳生活も小学校に上がるとさすがにできなくなった。義務教育を受けるために、どうしてもあたしを外へ出さなきゃいけなくなったから」