「あたしが産れたのはこの家だった。畳の上に、直接産み落とされたんだって」


美世は部屋の中を見渡してそう言った。


今どき珍しく自宅出産だったようだ。


「その時から、あたしへの洗脳は始まってたの」


「洗脳……?」


あたしは眉を寄せてそう聞き返した。


「そう。あたしは小学校へ上がるまで一歩も家の外へ出たことがなかった。ずっと家の中だけで生きてたんだよ」


美世はそう言いながらぬいぐるみで遊び始めた。


ぬいぐるみに畳の上を歩かせるその姿は、幼い少女のようだった。


「あたしは病気だから、少しでも外へ出ると死んでしまう。両親からそう聞かされてた」


「嘘……」


あたしは自分の口に手を当てて呟いた。


あたしと出会ったころの美世は元気いっぱいで、病気知らずな子だった。