あたしは息を飲み、隣に立つ美世へ視線を向けた。


美世は無表情でジッとウサギのぬいぐるみを見つめている。


「まだあったんだ。このぬいぐるみ」


美世は小さな声で呟く。


ということは、これは美世のもので間違いないようだ。


「どういうこと……?」


そう聞いた時、またウサギがあのセリフを言った。


なにかに反応して声が出るようになっているみたいだ。


「この子の名前はウサ吉さん。あたしがつけたの」


そう言い、美世はあたしの手からぬいぐるみを取り大切そうに抱きかかえた。


「それ、美世のぬいぐるみなのか?」


昌一が聞くと、美世はぬいぐるみに視線を落としたまま頷いた。