「嫌っ!」


あたしは悲鳴を上げて目を開けた。


目の前に広がっているのは保健室の風景だった。


全身に汗をかいていて、心臓もバクバク言っている。


「夢……?」


そう言えば、美世からスマホを返してもらってからの記憶がない。


あたしはいつからここで寝ていたんだろう?


灰色の目をしたクラスメートたちを思い出すと、背筋が寒くなった。


アプリに洗脳されているという事態が、あんな風にして夢に出てきたみたいだ。


夢見は悪かったけれど、眠ったことで少し気分は落ち着いていた。


少なくとも、アプリを消した時のような過度なストレスが消えている。


「やっと消せたんだ……」


ホッとしてそう呟いた時だった。


《消せないよ》


そんな声が聞こえてきてあたしは息を飲んだ。


今の声、あのウサギの声に似ていたような……。


まさか、そんなハズがない。


美世に頼んでアプリは消したし、なによりあたしは今質問なんてしていないんだから。