「みんなはこんなに使ってるのに?」


沙月の周囲に集まっていた男子生徒たちの手には、スマホが握られている。


きっと、会話の内容を質問したりしていたのだろう。


「そんなの個人の自由でしょ?」


沙月は苛立った様子でそう言った。


やっぱり、なにか隠しているみたいだ。


「沙月はもうアプリを消したんじゃないの?」


そう聞いたのは美世だった。


そして美世は自分の身に起こった出来事を沙月に説明した。


「あぁ~、うん。そうだよ。あたしも美世と同じで気分が悪くなったからアプリを消したの」


沙月は美世の話に何度も頷いてから、そう言った。


本当だろうか?


今の反応は美世の話に乗っかっただけのようにも見えた。


「話はもう済んだでしょ? どっか行ってくれない?」


沙月がそう言うと、男子生徒たちがあたしと美世の体を押しのけた。


「ちょっと……!」


文句を言うよりも先に輪の外へと押し出されてしまった。


これ以上沙月に質問することは難しそうだ。


「仕方ないよ」


美世はため息まじりにそう言ったのだった。