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ご飯の匂いが届かない中庭までやってくると、食べないことへの苦痛が軽減された気がした。


今のあたしに食べ物の見た目や匂いは一番の天敵になる。


ベンチに座って漫画本を読んでいると、自分がお腹が空いていることも忘れられて丁度いい。


問題は家に戻ってからだった。


一週間もご飯を抜けばさすがに病院へ連れていかれるかもしれない。


どうにかして食べているように見せかける必要があった。


「ねぇ、どうすればご飯を食べているように見せかける事ができるかな?」


気が付けば漫画を置き、スマホでお役立ちアプリを起動していた。


その間の記憶がほとんどなかったけれど、画面に写っているウサギを見ていると気にならなくなった。


《ボクが解決してあげる! おにぎりを作ってもらって、部屋に持ってきてもらうといいよ! おにぎりはゴミ箱に捨てて、お皿だけを返すんだ》


「あぁ~そっか。やっぱり頭いいなぁ」


何度も頷いてそう呟く。