「麗衣。さっきまで顔色が悪かったけど大丈夫か?」


その声に振り向くと昌一が立っていた。


「昌一! 全然大丈夫だよ」


これは嘘じゃなかった。


今はスッカリ吐き気も治まっている。


「そっか。それなら良かった」


そう言って安心したようにほほ笑む昌一に、胸の奥がキュンとした。


あたしはやっぱり昌一のことが好きなんだ。


「それにしても、なんか教室の雰囲気変わったよなぁ」


「え?」


昌一の言葉にあたしは首を傾げた。


「人が3人も死んでるのに、この明るさっておかしいだろ」


「あぁ……。そうかな? みんな悲しいけど我慢して明るく振舞ってるんじゃないかな?」


「そんな風には見えないけどな。特にあそこ」


そう言って昌一は沙月の席を指さした。


クラスメートが死んだ悲しみよりも、沙月に気に入られることを優先しているのは一目瞭然だった。


「大丈夫大丈夫。あんなの気にする必要ないって」


あたしはそう言い、ほほ笑んだのだった。