「マジ最低」


自分を捨てた男に簡単に助けてもらうカノンは確かに最低だ。


でも、その言葉を口走ったのが佑里香だったので驚いてしまった。


「じゃあさ、カノンはあたしらでやっちゃう?」


ふと思いついてあたしはそう言った。


浩哉に守られたカノンだけこれ以上傷つかないなんて、あたしには納得できなかった。


「いいね! じゃあ、一旦アプリに聞いてみようよ。どうやってカノンに反省させればいいかどうか」


佑里香に言われてあたしはスマホを取り出した。


本当にどんな悩みでも解決してくれる便利なアプリだった。


「カノンへの制裁方法は?」


《ボクが解決してあげる! 坊主にしちゃえ!》


その回答にあたしと佑里香は目を見交わせ、それから吹きだした。


カノンが坊主になったところを想像したらおかしくて、涙まで出て来てしまう。


「ハサミしかないけど、いいよね?」


筆箱からハサミを取り出してあたしと佑里香はカノンに近づいた。


制服を破られたことで放心状態になっているカノンの髪は、とても艶やかで綺麗だった。


あたしはその髪をひと束握りしめた。


「え、なに?」


カノンが振り向こうとするから、「動かないで。耳まで切り落とすから」と、早口で言った。


「切り落とすってなに?」


その質問に答えるまでに、あたしはカノンの髪にハサミを入れていたのだった。