教室内に張りつめた空気が流れて行く。


「付き合うときに言ったよね? 浩哉の強さに惹かれたんだって。強くなくなった浩哉なんて、全然魅力的じゃないんだよね」


カノンはそう言って息を吐きだした。


「それでも付き合ってきたんだから、少しくらい違う感情とかあるんじゃないのかよ」


「全然?」


浩哉の言葉を完全に否定してしまっている。


カノンが強い男にこだわるのは学校生活での、自分の立場を重視しているからだろう。


あたしにはそう見えた。


「想。一緒に帰ろう」


まだ何か言いたそうな浩哉を無視し、カノンは想の手を握りしめて歩き出したのだった。