沙月は悪くない。


頭では理解しているのに、気持ちは全く付いて行かなかった。


あたしのライバルは沙月?


そんなの、勝てるわけがなかった。


「沙月に勝ちたいなら、それも相談すればいいじゃん」


思い悩んでいるあたしへ向けて佑里香が軽い口調でそう言った。


「あ、そうだよね」


スマホ画面を見つめると、まだウサギが飛び跳ねている。


次の質問を待っているのだろう。


このアプリに質問すれば、きっとあたしは昌一と付き合うことができる。


沙月に勝つことができる!


そう思うと急に勇気が湧いて来た。


沙月もあたしと同じようにお役立ちアプリを使用するかもしれないから、先手を打った方がいい。


「沙月に勝つためにはどうすればいい?」


《ボクが解決してあげる! まずはメークを頑張ろう!》


その答えにあたしは一瞬にして拍子抜けしてしまった。


想のイジメ回避の時と同じような、突飛な答えをくれると思っていたのに……。


「コツコツ頑張れってことだね」


アプリからの答えを聞き、美世が苦笑いを浮かべてそう言ったのだった。