☆☆☆

崖を舌へ下って行くのは想像以上に怖いことだった。


足をかけた岩がグラついていたり、風が強く吹いて体をもっていかれそうになったりを繰り返す。


ボートはすぐ目の前なのになかなかそこまでたどり着く事ができない。


「大丈夫だから、ゆっくり!」


先にボートへ向かった克己が下からあたしを誘導し、スマホで足場を照らしてくれる。


それだけが頼りだった。


少しでも足を滑らせて海に落ちたらその時は……。


そこまで考えて、背中に冷たい汗が流れて行った。


こんなところまで来て失敗することを考えちゃいけない。


克己はすぐ下で、手を伸ばしてあたしのことを待っていてくれているんだから!


自分自身を叱咤し、どうにか恐怖心を押し込めて崖を下る。


そして克己の手があたしの腰を支えた。


やった!


ついにボートに到着した!


後一歩下に降りてボートにうつれば成功だ!