あたしは驚いて目を見開いた。


「どうして克己がここに!?」


「大きな声を出すなよ。いくら警戒態勢が薄いからって、誰かが来るぞ」


生にそう言われ、あたしはグッと口を閉じた。


「お前の大好きな元カレも一緒に連れて行ってやろうと思ったんだ。俺って優しいだろ?」


生はそう言って笑った。


嘘だ。


生がそんなことをするはずがない。


「克己はなんて言ってここに連れてこられたの?」


「ボートがあるって聞いた」


克己は痛みに耐えるような声でそう言った。


嘘は伝えていないようだ。


「ボートは3人乗りだ。安心しろ」


「……本当に?」


どうして生が克己を助ける必要があるのか、わからなかった。


「俺を信用しろよ。ボートは向こうだ、行くぞ」


生はそう言い歩き出したのだった。