そのハンカチには嘔吐物がこびりついている。


「え、嘘でしょ……?」


咄嗟にそう呟いていた。


渚はいつ吐いたんだろう?


ハンカチを突っ込んだままだったから気が付かなかった。


「ちょっと待って! 息してない!!」


渚の呼吸を確認した美文が、叫ぶように言った。


「嘘……」


死んだ?


あたしたちが、殺した?


一瞬にして全身が冷たくなった。


人を殺してしまったなんて信じられない。


こんなに簡単に人が死んでしまうなんて思えない。


だけど、あたし達の前に転がっている渚は確かに息をしていなかったのだった。