美文と入れ替わるように入って来たのは渚だった。


さっきまで渚の話をしていたので、自然と視線を逸らせてしまった。


「美文、あたしのことなにか言ってた?」


渚は立ったままあたしと麻子ちゃんにそう聞いて来た。


「ううん、なにも」


咄嗟に嘘をつく。


あんな話をしていたなんて知られたら、渚と美文の関係は更に悪化していくだろう。


修復不可能になってしまうかもしれない。


渚は「あっそ」と冷たく返事をして部屋を出ようとする。


ドアを開けた状態で一旦立ち止まり、あたしを見た。


なにを考えているのかわからない渚の視線に、たじろいてしまう。


「そうだ。今日はごめんね?」


渚は全く心のこもってない声でそう言ったのだった。