「余計な口出しは無用です。退学になりますよ?」


にこやかな笑顔でそう言う先生に、男子生徒は黙り込んでしまった。


退学という文字をちらつかせて黙らせるなんて、卑怯だ。


そう思うが、あたしにはなにもできなかった。


ただ目の前の大志が無事に綱を渡り切るのを願うばかりだ。


大志は唇を引き結び、足を踏ん張って立ち上がろうとしている。


その度に綱は大きく左右に揺れた。


頑張れ……!


畠平さんをあんな風にした大志だけれど、死んでいいとは思っていない。


こんな風に、大人たちの遊び道具として死ぬなんて絶対にダメだ。


畠平さんへの謝罪だって終わってないはずだし、こんなところで終わるなんて……。


次の瞬間、大志の体がまたバランスを崩していた。


綱を掴もうとした手がすべり、空中を掴む。


あっという暇だってなかった。


大志の体は真っ直ぐに落下してきて、剣山へと突き刺さる。