電車の中で沢山の出来事を思い出していた。

 今までの生活とは違う。
 お母さんが亡くなり、沢山の人に支えられてここまできた。
 でも私にはやりたい事がまだ全然できていない。

 みんなと楽しく過ごせた日々は忘れる事はないだろう。

 これからは私が、私自身が強く生きていかなきゃ何も出来なくなってしまう。
 そういう不安もあった。

 自分でやらなきゃ、何も変わらない。
 ずっとこのままは……違う。

 私は夢の中にずっといたんだ。

 みんなと出会い、あの悪夢は見なくなっていた。

 今までは、あの悪夢にうなされた日々だった。

 つらい事故の記憶。
 私が歩けなくなってしまったのも、あの事故のせい。
 みんなと再会して、毎日が楽しかった。
 もうきっと乗り越えたんだ。つらい過去から。

 電車を降り、急いで家に向かった。

 まだ誰も帰ってきていない。

 荷物の整理を始めた。

 お母さんとの思い出の家。

 私自身が変わるには、この家から出ないといけない。

 お母さん……ごめんね。
 私、この家から出て行く事にしたよ。
 許して下さい。

 心の中で、お母さんにそう問いかけた。

 カタン

 ポケットの中から何か落ちた。

 貰ったキーホルダーだった。

 そのキーホルダーを手に取り、握りしめた。

 今まで我慢していた分が溢れ出すように、涙が止まらなくなってしまった。