破壊の力を使おうとするが、パトリックに刺された肩が痛く力が入らなかった。

 リチャードも左腕に負った傷を庇いながらヴィンセントと協力してコールに立ち向かう。

 傷が邪魔をして二人とも本来の発揮ができないでいた。

「あの傷はデバイスの剣で負ったもの。パトリックがやったのか」

 ブラムが三人の戦う姿を高見の見物のように見ながら聞いた。

「全く二人を傷つけるつもりはなかったのですが、結果的にそうなってしまいました」

「そうか。そんなに悲観するな。ディムライトとしてダークライトを始末するのは悪いことではない。お前は当然の義務を果たしただけだ。コールはともかくとして、あの二人も我々には邪魔な存在。パトリック、あの二人を始末するんだ」

 パトリックは衝撃を受けていた。

「ちょっと何を言ってるの、ブラム。リチャードもヴィンセントも私達の味方。それはあなたもわかっていることじゃない。パトリックだってそんな命令に従えるはずがない」

 アメリアが非難した。

「パトリックは私の支配下にある。そして私に忠誠を誓ったディムライト。私の命令には背けない。背けばそれが何を意味するかパトリックにはわかっているはずだ。今ならあの二人はコールに気を取られている。不意をついて背後から剣で突き刺せば始末できる。それにヴィンセントは君にとっても邪魔な存在だろ。さあ、やるんだ」

「ブラム、めちゃくちゃなこと言わないで。パトリック、言うことなんて聞かなくってもいい。ブラムは狂ってるわ」

「私が狂ってる? その狂ってる私を好きでいてくれたのは誰だ? 呼び寄せる力は、本人が愛しているだけでなく、相手も同じ気持ちを持っていなければ反応しないのはアメリアも良く知っているだろう」

「やめて!」

 アメリアは子供のように耳をふさぎ、無駄だと判っていても頭を強く振って逃れようとした。

 ブラムの言う通りと判っていても自分の本心が素直に認められず許せない。

 ブラムの言葉ですっかり心乱され周りが見えなくなった。

「さあ、パトリック、あの二人を始末しろ。その間にコールは私が始末をしてライフクリスタルを奪い返す。早くしないとベアトリスが消えてしまうぞ」

 パトリックはブラムの命令には逆らえなかった。

 ホワイトライトは絶対的存在であり、命令に従わなければ自分自身の存在、家族や親戚、そして自分の町の全てのディムライトに影響を与えてしまう。

 パトリックは背に腹は変えられなかった。

 ベアトリスの青ざめた顔を見つめ、パトリックは覚悟を決めた。