久々に見るベッドに横たわっている自分の姿。

 ゴードンが世話をしていたお陰で、体の傷もすっかり治り、後は意識が戻ればすべて元通りだった。

 コールは暫く黙って自分の姿を見つめていた。

 ゴードンはまだ影に支配され、意識を乗っ取られたままだった。

 コールにとってはその方が扱いやすく、普段のゴードンよりも的確に事を運ぶことに満足だった。

 そしてゴードンがマーサを連れて瞬間移動で部屋に現れた。

 マーサはすぐにベッドに寝ているコールの側に近寄り、愛しく顔を撫ぜると、そっと唇にキスをした。

「おい、本人の意識は今こっちだ。寝ている俺に勝手に触れるな」

「だって、久しぶりなんだもん。早く意識が戻ったあんたに会いたい」

「それはわかったから、今朝の報告をしてくれ。何が見えた?」

「ああ、子供の頃の事が見えた。あのディムライトの男の子、小さいときに親同士で勝手に婚約させられたみたい。親同士が書類にサインしているところが見えて、その隣には大金が積まれていた」

「その婚約の相手っていうのがベアトリスのことか。親が子供を売ったのか」

「そのあと見えたのは、眼鏡をかけた冷たい感じの女が出てきて、女の子を殺そうとしてた。多分ライフクリスタルを奪おうとしてたと思う。そんな感じの映像が見えた。次にリチャードが出てきて、それを止めたけど、代わりにその女の子の両親の方を殺していた」

「なんだって。リチャードがベアトリスの両親を殺した」

「母親と父親が意識を失った状態で車に乗せられ、リチャードがそれを操って走らせてわざと木にぶつけ炎上させた。その後もう一人、髪の長い男のホワイトライトが姿を現し、何かを喋っていたけど、声まではわからない。三人はぶつけ合うように話し合ってた。女の子は気を失ったまま、側で金髪の男の子に抱きかかえられて見守られていた」

「金髪の男の子、ヴィンセントのことか。それからどうなった」

「この時の映像はここまでだった。その後は女の子が誰に引き取られるかでもめて、そして眼鏡をかけた冷たい女が無理やり連れて行って、ディムライトの男の子が必死に止めようとしてる感じの映像だった」

「断片的な記憶では詳しいことはわからないが、ベアトリスには何か秘密があるようだ。それにリチャードとヴィンセントがかなり昔から噛んでいたのか。通りでヴィンセントはベアトリスに執着している訳だ。小さいときから好きだったってことか。恐らくベアトリスはリチャードによって記憶を塗りつぶされているんだろう。しかしなんのためにベアトリスの両親は殺されて、ベアトリスも命を奪われかけ、そしてノンライトとして正体を偽って生活しているんだ? 謎だらけだな」

「そんなことはどうでもいいじゃない」

 マーサはコールに近寄った。

 そしてキスを求める。

 コールはゴードンに席を外せと指でさしずすると、ゴードンは姿をすぐに消した。

「中身はコールだけど、体は高校生で顔も違う。本当のコールはあそこで寝てるし、なんか変な感じ」

 マーサが人差し指でコールの胸元をそそる様に撫ぜた。

「目を瞑ればいいんじゃないか」

 コールの言葉でマーサは目を閉じる。唇が重なりあい、舌を絡ませたキスが始まり、そして耳元へ移動してその下の首筋を柔らかい舌先でくすぐるように舐められるとマーサは声が洩れるように喘いだ。

「やっぱりコールだ。私の感じるとこちゃんと覚えてる」

「この体も鍛えてやったからそんなに悪くないぜ。試してみるか」

 マーサはそれに答えるようにその体を強く抱きしめていた。