ある日の放課後。


「海斗」


授業が終わった途端、マナが俺の机に向かって、嬉しそうに駆け寄ってくる。


この世のものとは思えない絶世の美少女を、俺だけが独り占めしているのだから、男子生徒からは羨望と嫉妬の視線が、毎日毎日、矢のように突き刺さる。


普通に付き合いだしてからもう3月は経つというのに、この幸せには、なかなか慣れることは出来ない。



「今日は、どうしようか」



俺は、考えた。



それは、最近頭を悩ませる事案だった。




暖かいし、広い公園を2人で散歩したい。

図書館で本を読みながら、マナの寝顔を時々見ていたい。

2人で、ショッピングがしたい。

カフェで、ゆっくり話をしたい。

彼女を家に呼んで、2人で過ごしたい。

一緒に、昼寝をしたい。




いやいや、それはマズイだろ、まだ。
いくら何でも。



選択肢が多すぎる。



マナは笑った。



「ほらほら、どうするの?『マスター』」



マナは意地悪そうに笑った。



俺は苦笑いして、こう言った。




「サイコロでも持ち歩くかな」


どの選択肢を選んだとしても、幸せであることには、変わりないのだから。