色とりどりの光が、長い弧を描く。

一つ一つの眩しい色たちは、溶け合うようで、決してそうはならない。


虹が幾千も連なるように、鈴の音のように綺麗な音を立てながら、1人の人間の形を作り上げた。


鈴の音が鳴り止むと、たった1人の海斗が目の前に、立っていた。


彼は、黒い浴衣を着ていた。


いつの間にか私は、ピンク色の浴衣を着ていた。


ここは、彼の部屋では無かった。


岩時神社の、鳥居の前だ。


私は、彼に挨拶した。


「おかえり、海斗」


私は、ちょっと躊躇ってから、こう付け加えた。


「そして、はじめまして」



海斗は少し、ムッとした。


「はじめまして、じゃない」


海斗はグーで私の頭を小突いた。
全然痛くない。そこに愛を感じる。


「舞台観た後、大好きって、言ってくれただろ」

不満そうに、彼は思い出を語り出した。

覚えてるんだ。

私は嬉しくなり、慌てて頷いた。


「カフェの休憩室で、寝起きにキスしてくれただろ。顔赤くしながら」

彼は、柔らかく微笑んだ。

私は赤くなりながら、頷いた。
そんな事も確かにあった。

「手の甲にキスした時も、赤くなってた」

からかうように、面白がるように、彼はこう付け加えた。

もうわかったから、恥ずかしいからやめて、とは、さすがに言いづらい。

顔が熱い。

「買い物の後、初めて嫉妬した」

彼は急に真っ直ぐな眼差しで、私を見つめた。

「その時、キスした」


「…うん」

忘れない。ずっと。


「部屋の中で数え切れないくらい、キスした。俺を助けてくれるためだったけど」


私は慌てて、こう言った。


「そう、だね。でもちょっと違うよ。私がしたかったから、何度もした」


「口移し、してもらった」


そうそう。あれも…。ん?


「そうか、あれも、したかったから、してくれたのか」


「したかったから!」


そうそう、きっと。もう、それでいい。


1人の海斗の中に全員いるみたいだし。


提灯に火が灯り、7年に一度の『岩時祭り』が始まろうとしている。


私は海斗の腕に手を回した。

「一緒に、回ろう!」