「会いたかった」


私は目の前に立つ彼に、こう言った。



そこには、『赤色』の海斗がいた。


がらんとした、広い部屋。


黒いベッドに、グレーのシーツ。



小さな黒いテーブルに、小さな黒い椅子が1つずつ。


それだけ。


部屋の中は、たったそれだけ。



そして、部屋の真ん中に立っている彼は、私を見つめて言葉を失っているようだった。


信じられない、といった表情。


その瞳だけは、赤く燃えている。


それは、静かな怒りの炎。


「『赤色』の海斗。あなたに、謝りたい」


私は、彼の目から、決して、自分の目を逸らさないと決めた。


「あなたを、助けたい」


『赤色』の海斗は、乾いた声で笑った。



「笑わせんな」



彼はこちらに歩み寄り、私の顎を持ち上げた。


「お前が俺を助ける?それは無理だ」



至近距離。苦しくても私は、彼から絶対に目を逸らさない。



「私を、憎んでいるから?」



「どうしてそう思う?」



「私があなたの心をバラバラにしたから。だから、謝りたくてずっと…」


涙が溢れ出てしまう。ダメだ、目を逸らさないと決めたのだから。


「ずっと探していたんだ、あなたを」


『赤色』の海斗は笑った。


「ふざけんな」


彼は、私の体を強引にベッドに押し倒した。



「お前が、俺を傷つけられるとでも、思ってるわけ?」



首元に、キスが落ちる。


少し強引に、何度も、何度も。


「思い上がるな」


白いワンピースの胸元のボタンが、1つずつ外されていく。


露わになった胸にもキスが、落ちてくる。


私は、怖くはなかった。


だけど、これだけは伝えたい。


「いいよ、抱いても」


私は、『赤色』の海斗の髪を、そっと優しく撫でた。


「でも、何度私を抱いても、あなたの乾きは治らない」




また欲しくなるだけ。


ただ、それだけ。


悲しくなるだけ。


しばらく、『赤色』の海斗の動きが止まった。



「海斗…?」



彼は、涙を流していた。