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早瀬は休み時間はたいていスケッチブックに建物の絵を描いている。
それを南部は頬杖を付きながら眺めているのが、いつもの二人の姿だった。

「早瀬はセンスいいからな、建築士になったら俺のパン屋をデザインして建ててくれよ。」

南部は早瀬の描く建物のデザインが好きだ。
優しい外観も内装も、南部の好みに合っている。
早瀬の父親は設計事務所を経営していて、早瀬自体も将来は建築士になりたいと思っていた。

早瀬は持っていた鉛筆を南部に向けると不適な笑みを浮かべて言う。

「おう、高くつくぜ。」

それを聞いて、南部は鼻で笑う。
南部はパン職人になるのが夢だ。
だから、真剣な顔で言う。

「まあ、代金はパンで払うな。」

「はあ?お前バカにしてんのかよ。」

「お前こそバカにするなよ。俺の焼くパンは世界一だからな。ありがたく受けとれ。」

お互い真剣にそう言って、そして急におかしくなって笑い合う。
そんなくだらなくも大切な日々を過ごしていた。

それからお互い別々の学校へ進学し就職をする。
頻繁に連絡を取っていた訳ではないが、それぞれ自分の夢の第一歩を踏み出したことは知っていた。
早瀬は建築士。
南部はパン職人。