「もう・・・好きになるのは・・・やめる・・・もう猛さんとの関係は終わりにする。優ちゃんだけを想ってく・・・」
やめる??
冗談じゃない・・・
そんな簡単にやめられたらたまったもんじゃない。
お前は何も悪くないじゃないか・・・
そんな最低な奴とそんな最低な約束して・・・
お前は何のために生きてんだよ・・・
いや・・・
本当は生きていたくないんだよな・・・
きっとお前は生きようなんて思ってないんだよな・・・
最低な元彼を想って・・・
毎日傷ついている。
猛「桐生くん・・・・」
小声で声をかけた。
瞬「はい・・・」
猛「心愛のアパート・・・教えてよ・・・」
瞬「・・・」
猛「・・・教えてよ・・・」
俺を見つめてすぐに、桐生くんはメモを書いてそれを渡した。
瞬「・・・・心愛のこと頼みます・・・」
猛「うん。」
それはすぐに事務所を飛び出した。
そこは、車で30分の場所にあった。
駅からは遠く、街灯も少ない。
アパートは
築何年だろうか、昭和を思わせる古びた建物だった。
若い子が住むような、そんな雰囲気ではない。
2階建ての1階、1番奥の部屋が心愛の部屋だ。
正直扉なんて蹴飛ばせば壊れるだろみたいな心許ないものだった。
インターフォンはついていない。
中も電気がついていないようだったが、ダメ元でノックをする。
やはり誰も出てこない・・・
まだ帰ってないのか・・・
しかし、ここ家賃いくらなんだろ・・・
あの会社の規模で主任だったら、けっこう高給取りだと思うんだけど・・・
コツ・・・コツ・・・コツ・・・コツ
足音が聞こえる。
アパートの電球も切れているのか暗闇で誰かはわからない。
月明かりが顔をだし、顔を照らした
猛「心愛・・・」
「!!!た・・・猛さん・・・」
心愛は辺りをキョロキョロと見渡し
「誰かに見られたらどうするんですか・・・」
ズキン
何でそんな他人行儀なんだよ・・・
「春でも夜は肌寒いし・・・コンサート近いんですから・・・こんな所にいたらいけませんよ・・・」
心愛は、自分がつけていたマフラーを俺に巻き付けた
「・・・喉は・・・アーティストの命です・・・」
猛「話があって来たんだ・・・」
「・・・・来週、コンサートの設営撤去に入ることになりました。お話はその時伺いますよ。」
猛「今がいい。今じゃないと、二人きりで話せない。」
「・・・」
心愛は悲しそうな顔をして
「・・・中にどうぞ・・」
そう言った。
猛「ありがと・・・・お邪魔します。」
「すいません、少し散らかってますけど・・・」
中はリフォームされているのか、見た目より綺麗だ。
玄関に入ると短い廊下があり、右に扉がある。
洗面所かな??
扉を開くと中は広く、10畳はあるだろうリビングとキッチンがあった。
ソファーにテレビ、机しかないシンプルな部屋だが、あまり生活感は感じない。
右に襖があり、そこを開けると煙草の香りがした。
そこに心愛が入っていく。
「着替えますから、少し待っててください。」
暫くすると、ラフな格好をした心愛が出てきた。
「お茶いれますね・・・ソファーに座ってて下さい。」
明るい部屋に入り、ようやく気付いた
猛「顔色・・・悪い・・・熱あるんだっけ・・・お茶はいいから座って??」
少し青白く、痩せたように感じた。
猛「飯食ってるのか??」
「・・今日はまだ食べてないですけど、平気です。」
猛「空きっ腹で酒はよくねーよ。今からでもいいから何か食べろ??」
苦言を呈せば、苦笑いをして誤魔化していた。
「大丈夫だから・・・」
猛「いや駄目だよ・・・冷蔵庫勝手に開けるよ??」
ガチャ
10秒チャージゼリーがところせましと入っていて、
猛「!!・・・なんじゃこりゃ・・・」
本当に溢れんばかり入ってるじゃねーか・・・
「じゃあこれを・・・」
猛「まぁ・・・ないよりいっか・・・」
これからコンビニに行くわけにもいかないし、とりあえずゼリーを渡し、彼女と話すためにソファーに座った。

