「日本に戻れたら………か。」
日本に帰ったら、自分はどうするのだろうか?そんな事を考えると、ミツキはいつも答が見つけられなかった。
異世界に長く居すぎたせいなのかもしれない。
ミツキはため息をつきながら、ベットから起き上がり身支度を整えた。普段ならば朝食をとりに行くが、ミツキはちょっとした異変に気づいたのだ。
窓から見えるエルハムの部屋のカーテンが開いていたのだ。
いつもならばこの時間は閉まったままだ。
今日は何か予定が入っていただろうか。
ミツキはしばらく考えたが、そんな話しを聞いた覚えはなかったのだ。
ミツキは、いつもの順番を変えて、エルハムの部屋へと向かうことにした。
トントンッ トントンッ
何回か部屋の扉をノックしてもエルハムからの返事はなかった。カーテンが開いていたのだ、寝ている事はないだろう。
奇襲事件の事もある、ミツキは「姫様、失礼致します。」と扉越しに声を掛けて部屋を開けた。
すると、そこはいつもと変わらない整えられた部屋のままだった。けれど、そこにはエルハムの姿はなかった。
「エルハム?」
ミツキは、部屋に見渡し、端から端まで確認したけれど、やはり彼女はいなかった。
「あいつ、どこに行ったんだ………?ん、これは………。」
フッと視界に入った物にミツキは目を止めた。
そこには、エルハムとミツキが勉強するときに使っているテーブルがあった。
その上に何か紙が置いてあるのだ。
そこには、丁寧に書かれた日本語が並んでいた。日本語を書ける人物。それは、ミツキ以外ではエルハムしかいない。
『すぐにかえって来るから、心配しないで下さい。 エルハム』
そう書かれていた。
誰宛なのか書いていないが、日本語で書かれているのだから、読む事が出来るミツキに向けたものなのだとわかる。
「あいつまた勝手に一人でっ!!」
ミツキは、その手紙を持ったまま勢いよく部屋を飛び出した。
ミツキが向かう先はただ1つ。
エルハムが居るであろうチャロアイト国だった。