昨夜、彼は持ち帰った仕事を書斎で遅くまでやっていた。喉が渇いて深夜の一時に目が覚めた時、まだ隣にいなかったから、だいぶ遅くまでやっていたんだと思う。

コンコンとドアをノックして、ゆっくりと部屋に入った。

「俊也さん?」

だけど反応はなく、ベッドに近づくと規則正しい寝息が聞こえてきた。

やっぱりまだ寝ている。起こすの、なんか悪いな。

膝をつき、頬杖をついて彼の寝顔を眺める。

俊也さんは宣言通り、一ヵ月経つけどキス以上のことを求めてこない。まぁ、私の場合はそれだけでドキドキして、キャパオーバーしちゃうんだけど。

会社では上司と部下として、これまでと変わらず接してくる。ミスをしたら当然叱られるし、注意もされる。同僚と扱いが変わらない。

でも一歩会社を出ると激変。家では常にくっ付いてくるし、意外と甘えたがり。でも優しくて気遣ってくれるところは会社と変わらない。

家事はできる限り手伝ってくれるし、毎食いつも必ず『美味しいよ、ありがとう』と言ってくれる。

これまでひとり暮らししていたから、料理も掃除も洗濯も当たり前にやっていたことだし、別にひとり分増えたところで、大きな負担になっていない。