「終わったー!」



閉店が迫る8時半。

一夏はそう言って大きく伸びをした。



「お疲れ様。はい、これ私の奢り。

お給料から引いてもらっとく。」



私はカフェラテを差し出した。



「おー!」



一夏はそのカフェラテに描かれたラテアートを見てそう言う。



「ちょっとは上手くなったでしょ?」



私は自分がちょっと得意気になっているのを感じた。



「お疲れ。」



私がそう言うと一夏の表情はまた緩くなった。



「ねえ、一夏。

もし私が今、会長じゃなくて会計やってたら、一夏と菊池君だとどっちが会長になってた?」



「菊池君だよ。

きっと私が会長になることはないよ。



私はさ、どこまでも2番手だから。



私は由羅には勝てないよ、どんな点だって。

だから由羅が1番で私が2番。」



一夏はそう言って私の作ったラテアートを名残惜しそうに口付けた。



「そんなことないよ、一夏は一夏で1番輝いてるから。



一夏の目はね、まっすぐ1つのところに向かってる。

そんな目が私は大好きだよ。



一夏の目が私を支えてくれているんだ。」



「由羅...

私があなたを救ってあげる。



だからいつまでもそばにいてね。」



一夏の目に涙が溜まっているのを見て私は



「そうだね、待ってる。」



と言って笑った。