無事一塁からの走者はアウトにしたものの、ダブルプレーとはいかず、アウトがひとつ増えただけとなった。
「お姉ちゃん、類なにしてんの?」
「わからない...」
そして次の投球前、類は手首を軽く振ってから構えた。
投げられたボールはさっきより遅く感じられた。
「遅くない?」
「うん...」
もしかして。
私の中で全てが繋がった。
「お願いだから、乗り越えて...」
私は今までにないぐらい強く願った。
「類っ...!」
類は大きなフォームでボールを投げる。
さっきより球速は戻ったがそれより前の時ほどの球速はなかった。
さっきのカーブとは違い、今度はストレート。
「「あっ!」」
真っ直ぐなボールはバットの芯に当たり、左中間へ。
類はその高く上がったボールを呆然と見ていた。
ボールはそのまま客席の中へゴール。
「嘘...だ。」
隣から心菜の小さな呟きが聞こえた。
バッターボックスに相手チームの全員が集まり、類はその場にへなへなと座り込み、空を見上げていた。
その姿があまりにも哀しくて蒼く見えた。
私の頬を涙が流れる。
それから挨拶が済まされ、しばらくの時間が流れた。
「行こっか。」
私の頬を流れた涙も乾き、グラウンドはもうさっきの熱気を感じさせなかった。
私は弁当箱を持って立ち上がった。



