着地をしたチームメイトは少しバランスをする崩しながら一塁にボールを回した。



けれどバッターは既に一塁に近付いていた。

ファーストに届いた時にはもうランナーは走り抜けていた。



類がタイムを審判に訴え、ピッチャーマウンドに人が集まる。



類がショートの子に何かを話す。

でも、そのショートの子は手を振り何かを拒否して自分のポジションに戻り、周りも自然と元の場所に戻って行った。



9回裏、1-0。ノーアウト一塁。



この回でこのまま行けばホームランを打たれない限り勝利。



「頑張れ、類。」



私は類が腕振り上げると息を呑んだ。



「ストライク!」



審判の声を聞いて1度息を吐くも、また次の緊張感が走る。



「あっ!」



次の投球をバットが掠め、ショートの方向へ。



するとそこに類の手が伸び、ボールを捕らえ、二塁にいるセカンドに投げる。



「え?」



あれは普通、ショートが捕るボールだ。

ましてやピッチャーがあのスピードのボールを捕るなんておかしい。



あのスピードでは手を痛める可能性があるからピッチャーは捕ることを極力避けるはずだ。