次の打者が打ったボールはレフト方向に飛ぶ。
類は走り出し3塁を通ってホームベースまで戻ってくる。
類がスライディングで入ると同時にキャッチャーがボールを捕る。
審判のセーフサインを見て私は立ち上がった。
心菜と私は手を取り合い、喜んだ。
チームメイトに向かい入れられ笑顔を見せる類に私は笑った。
「やっぱり楽しいでしょ。」
私は類に言ってみた。
届くはずのない言葉に類がこっちを見て頷いた。
その頷きは何への頷きかはわからないが、きっと何かが伝わったんだと思う。
試合はそのまま1-0のまま9回裏へ。
これを守りきれば全国大会。
最後までマウンドを任された類。
私に向けた背番号1。
2年前は私より幾分も小さかったのに今ではもうさほど変わらない。
昔よりも随分頼もしくなったた背中を見つめる。
私よりもずっと大きく見える。
もう、私がいなくてもきっと大丈夫なんだろう。
類は枠を出ようとしている。
私は祈るように指を組み合わせた。
類の投げたボールをバッターが打った。
目で追うとショートのチームメイトがジャンプしてグローブにボールを収めた。



