時計の長針が12を指す。
試合開始だ。
中学生といえど県大会決勝。
私が見てきたものより圧倒的にハイレベル。
打球の飛距離も盗塁のスピードも。
類の投げる球速だって。
「ツーベース?」
隣に座る心菜が呟いた。
類はバッドを放り投げて一塁へ走る。
一塁を回る頃、センターが転がるボールを拾おうとしていた。
「類...!」
私は思わずそう叫んだ。
一塁ベースを蹴り、二塁へ走る姿を見つめていた。
「間に合って、走れ...」
私は飛んでくるボールと類を比べみていた。
間に合わない、と思った時、ボールはセカンドのグローブの上を通った。
「「やった!」」
私と心菜は顔を合わせる。
私は胸をなでおろした。
本当はあんなの無茶だ。
元々類、という名前は野球のあのベース、塁から取った。
塁という漢字から類の文字に変わったものの、やはり“るい”という名前に恥じない存在だと思う。
きっと少し無茶なところも慕われる要因なんだろう。
どんなに無茶でも実現してくれる。
私は重心を下げている類を見た。



