「次の試合、いつだっけ?」



私は2年前より大きくなった背中に話しかけた。



「今週の日曜。」



「うん、姉ちゃん行こうかな。」



少し赤くなった目で私を見る類に笑いかける。



“姉ちゃん”なんて自分で言うのは久しぶり。

中学上がる前以来だろうか。



「県大会でしょう?

あの網越しからずっと枯れるくらい声出して試合後に練習場でみんなにおにぎり渡して。



2年前みたいにさ。

たまにはいいんじゃない。」



2年前まではそう過ごした。



私の笑顔につられてか類も笑う。

類の頭をわしゃわしゃと撫でまわした。



私は日曜のシフトに休み入れて監督にも連絡を入れた。



朝から二人がかりで1時間。

3段のお弁当いっぱいのおにぎりが出来た。



保冷バッグにお弁当を入れて心菜と家を出た。




類の所属するチームとライバルチームの県大会でしょう決勝。

春の全国大会への切符がかかる。



試合開始前、ユニフォームを着た類をスタンドから見た。



いつもな類が自分でやっていた背番号のゼッケンの縫いつけ。

昨日は私がつけた。



類が背負う1《エースナンバー》。

私が知らない間に野手からピッチャーに転身していた。



ずっとバッターとして活躍しているものと思っていた。

けれど所謂“二刀流”という形で活躍しているようだ。