◇◇◇ 小さく頭を下げた子を乗せた車は、駐車場を囲む垣根の外に出て、見えなくなった。 私は白衣のポケットに手を入れ、肩の力を抜く。 「良かったね、エリ。あなたの残したかったもの、ちゃんとあの子の中に残ってたよ」 目に見えなくても、そばにいると思い、呟く。 湖へと繋がる小道には、藤の花が咲き誇っていた。 【完】