「詐欺だと!?そんな言い方、目上の者に対して失礼だとは思わないのか!」

カーライル子爵の視線が鋭くなる。さっきまでグレースに向けられていたのとは違ってトゲトゲと刺さるようだ。

しかしグレースが怯んでしまいそうなそれを眇めるだけで受け流したヴェネディクトの瞳は闘争心を剥き出しにしてキラキラと輝いている。

「詐欺がダメなら騙した、と言い換えましょうか?まぁ結局、グレース一人なら簡単に言いくるめられると思って、この状況を作った時点で騙し討ちしたのと同じですけどね」

「このっ……随分と生意気な口を叩くじゃないか。ちょっと事業で成功したからって良い気になってるようだが、それはお前じゃなく全てグランサム公爵の力だぞ!思い上がるな!!」

「思い上がるなんて、そんな馬鹿な事しませんよ。僕にはね、目的があるんです。その為に焦らずじっくりと準備する大切さも、油断が致命傷になる怖さもきちんと理解している。貴方のようになんの準備もなく、目的を果たすついでに、都合の良い花嫁を見繕うような雑な真似はしないんですよ」