「意地悪な訊ねようですね。私は特段に聡明なわけではありませんから、分かっているのはひとつだけ。イーディス嬢の為に私が邪魔だ、と。ああ、それからもうひとつ。誰かに命じて調査させるくらい真剣なのだということ」

面白いがられてちょっと腹の立ったグレースはわざとあけすけな物言いをした。これで怒るなら怒ればいいのだ。

しかし、カーライル子爵は大きな声で笑いだした。

「ハハハッ。これはまた!これほど辛辣に言われるとは思いませんでした。いや、愉快!」

「愉快ではありません!」

終わらない笑い声にグレースは焦る。チラリと周囲に気を配れば、何事かと執事やメイドがこちらを窺っている。

「カーライル子爵!早く笑い止んで下さい!」

カーライル子爵は気にせずしばらく笑い続けていたが、グレースの怒りのこもった視線を受けて、ようやく笑いを止めてくれた。

「いや、失礼。貴女がこんな愉快な会話の出来る聡明な女性だと思っていなかったのですよ」