「……グレース?もしかして疲れちゃった?」

ボソボソと返事を求めるでもなく感想を呟くグレースが不思議だったらしい。ヴェネディクトが心配そうに顔を覗き込んで来た。

「違うわ。きっと……素敵過ぎたのかも」

顔を向けて少し笑みを浮かべたら、安心したのかヴェネディクトが頷いた。

「イーディス嬢の少女趣味は僕から見たら過ぎたところがあるけど、女性はああいうの好きだものね」

それはそうだと思う。でもグレースが眩しかったのはそこではない。

辛さや悲しみから守られて、大切に大切に育てられた少女は、人を疑う事も妬む事も知らなかった。ヴェネディクトが親しい女性と紹介したグレースにも陰りのない笑顔で迎え入れてくれた。
こちらが思わず罪悪感を感じてしまう程に光に溢れた笑顔で。

『まぁ、幼馴染だなんて素敵!ヴェネディクト様の子供の頃のお話聞かせて下さい』

『グレース様は妹がいらっしゃるの?いいなぁ。私もこんな優しいお姉様が欲しかったわ』