「素敵なお茶会だったわね」

「うん」

「イーディス様も可愛らしくて」

「うん」

「きっと素敵なレディになるわ」

「そうだね」

ガタガタと馬車の走る振動が身体に心地よい程度に伝わってくる。きっと落ち着いて話せるのはそのおかげもあるのだと、流れる景色を眺めながらグレースは客観的に状況を分析する。

レディング伯爵家のお茶会の帰り道、ヴェネディクトと二人で乗る馬車の中の空気は落ち着きすぎていて、頑張って話題を口にしなければ逆に落ち着かないのだ。

「テーブルセッティングも素敵だったわ」

真っ白なテーブルクラスと同じく真っ白な磁器のティーセット。彩りはピンクの薔薇とローズジャム。少女が夢見るお茶会をそのまま再現したような、現実感のない空間だった。

「イーディス嬢はアナベルより一つ年上だったわね」

フリルとリボンがふんだんにあしらわれたドレスを纏った少女は、美しくはあってもまだまだあどけなさが残った、結婚相手に『白馬の王子さま』を求める程に子供だった。結婚を現実として捉えているかは疑問だろう。

「きっとご両親に大切にされて育ったのね」

疑う事や戦う事と無縁に育ったであろう、無垢な純真さが素直に羨ましく眩しかった。