「くくっ。大丈夫だよ、僕も初めて来た時は今のグレースと同じだったから」

「そうなの?」

「そうさ。僕だけじゃなく大概の人はそうじゃないかな?」

「ーーーなら安心したわ」

笑顔で頷いてくれるヴェネディクトに安心して、やっとグレースは目の前のお出迎えの列に対峙した。

「お出迎えありがとう」

ヴェネディクトの挨拶に執事が一歩前に出て深く腰を折る。

「お待ちしておりました。ヴェネディクト様、シーモア伯爵家令嬢グレース様。ご主人様が首を長くしてお待ちです」

そのまま案内され邸内へと足を運んだグレースは、今度こそあんぐり口を開ける事になった。

きちんと清掃の行き届いた邸内は至る所に美術品が飾られている。華美ではないものの年代を感じさせるそれらは空間に不思議な貫禄を与えているのだ。

花があまり飾られていないのは、この邸に今は女主人がいないからか。全体的なイメージも男性的なその邸内を執事の案内で奥へ進んで行く。