「でもね、グランサム公爵と出会って、将来的にはどうにかできるんじゃないかって希望が持てたんだ。自分の努力で人生を開くのは夢じゃなくて現実に可能な事なんだって!」

「あの、ヴェネディクト?嘘の婚約の話、よね?」

熱がこもる視線にグレースはドギマギしてしまった。もしかしてヴェネディクトは本当にグレースと婚約しようとしているのだろうか?

「え?あ、ああ、うん。そう、今後の変な縁談を避ける壁になる為にね」

「そうよね。良かったわ」

ヴェネディクトが自分の為に人生を犠牲にするなんてあってはいけない。これまでも随分助けてもらってきたのに、この先の人生をグレースを助ける為に使うなんて、絶対にあってはならない事だ。